Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「立てるか?」

 松嶋は心配そうな顔を貼り付けてはいるが、内心はせせら笑っているのかもしれない。

 僕は、無言で立ち上がろうとして……膝が砕けた。

「鈴木先生!」

 凛花が真っ青な顔をして僕の右手を取った。

 本当に、暖かい手が僕に触れる。






 ……凛花。









「大丈夫だ」

 思わず微笑む僕の心を、松嶋の声が裂く。

「いや、無理だ。
あんたは、歩けない」

 松嶋は、僕に伸ばされた凛花の手を振り切った。

 そして問答無用とばかりに、僕を抱え上げる。

 荷物みたいに。

「相変わらず、軽い奴」

「うるさい」

 ……お前の世話になど、なりたくはないのに。

 少しでもあがこうとして、初めて気づいた。

 ……止血がされている。

 抱えると血で汚れるからか。

 単に、保健体育教諭の本能だからか。

 いつの間にか、松嶋の手持ちのタオルと、赤髪に破られた僕のシャツで溢れる血が止まっていた。

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