Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 僕は、一度だけ女の部屋を振り返ると、翼をたたんだま、大きく跳躍した。

 そして、地面に着地する寸前。

 男の目の前で、威嚇するように、翼を大きく広げると、そのまま、満月に向かって、飛び立った。

「うわわわわ~~」

 男の情けない悲鳴に驚いたのか、幾つかの家に明かりが灯る。

 男の他にも『僕』を見た奴がいるかもしれなかった。

 それでも、いいと思った。

 闇の中に、ただ一人。

 孤独さの中であがいている僕を、誰かに知ってほしかったのかもしれなかった。


 …………!


 人間には、さまざまな動物の咆哮が混じったように聞こえるらしい。

 僕は雄たけびを一つ上げると、気持ちがいいほど次々に灯っていく家々の明かりを眼下に、帰宅の途についた。


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