Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 人間の基準に照らしてみれば、痩せた凛花は羽根のように軽かった。

 しかし、人間は、空を飛ぶようには出来ていない。

 普段では問題ない過重も今の僕には、命とりだった。



 ……少しでも、暴れられたら、飛べない。



 ちらりと頭をよぎったものの、他に活路はなかった。

 群がって来る化け物達を、手の爪で、翼のかぎ爪でなぎ払うと、凛花を抱き寄せて、飛び上がる。

 凛花は。

 校舎の屋上ぐらいの高さまでは、僕の首に腕を回し、恐怖に震えながらもおとなしく腕の中に収まって……いたのに。

 一体、何に気がついたのか、急に僕から逃れようと身動きをし始めた。

「凛花! だめだよ。暴れないで!」
「いや! 放して! あなた、残月(ざんげつ)じゃないわ!」

「残……? 誰だって?」
「いやーーーっ!」

 凛花の抵抗に、僕はとうとう、バランスを崩してしまった。

 このままでは、落ちる。

 化け物がうようよしている、その中に。

 それだけは避けようと、暴れる凛花を抱えなおし、体勢を整えようとした時。





 一発の乾いた銃声が、僕の身を引き裂いた。

 

 
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