Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 人間からしてみれば、空飛ぶ化け物から、仲間を救うために放った、銃弾だったのだろう。

 それとも、混乱の中で発射された一発だったのか。

 非情な、冷たく、熱い弾丸は、凛花を掠めて僕に命中した。

 胸から背中にかけて貫通し、左翼の付け根を破壊していったのだ。

 激しい痛みで、全身に震えが走った。

 そして、涙で視界が曇る。




 痛みよりも、悲しみで流れた涙だった。










 ……もう、飛べない。



 落ちる。

 地面に向かって、落ちてゆく。






 僕は、最後の力をすべて使って、凛花を抱きしめた。

 この高さからそのまま落ちたら、凛花に傷がついてしまうだろう。

 凛花の盾になりたかった。

 墜落する衝撃を少しでも吸収し、1秒でも長く化け物達から凛花を守りたかった。

 落ちていきながら、僕はただ。

 自分が空中で死んでも、灰にならないことだけを祈っていた。
 
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