Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 今だ膨らみきっていない、月明かりを白く跳ね返す丸い乳房が、穏やかに上下するのを僕は、ほっとした気持ちで眺めていた。

 ……凛花に、大きな怪我は無いようだった。

 凛花が無事で、隣にいる。

 それだけで、嬉しかったし、幸せだった。

 何とか動く右手を使い、僕に掛かっていた薄い布を凛花にかけてやる。

 たったそれだけの事でも、鉛のように重かった腕を扱いかねて、ため息をついた。

 人間の姿さえ保てず、月光にさらす姿は、本性に近い。







「……女を抱かないのか?」


 部屋に響いた低い声に、一気に緊張感が高まった。


「それとも、まだ抱けないのか?」


 月光が落とす影の濃い、この部屋の扉から、一人の男が入ってきた。

 ……松嶋……?

 だとは、思うのだが、僕の知っている奴とは、だいぶ印象が違っていた。
 
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