Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 一方で僕は、松嶋の「教師の顔」も見た。

 時には厳しくも、穏やかに人間と対峙していたはずだった。

 人間が人間を教えているのと変わらない、善意と人間に対する誇りの尊重があったはずだったのに。






 松嶋の長い髪が、風に吹かれて、ざわりと鳴った。

 ベッドに仰向けに寝ている僕の両肩の近くに、それぞれ、ばん、と両手をつく。

 そして、そのまま僕の顔を真正面から睨むように見た。

「……体育倉庫であんたが血溜まりの中にいるのを見て、俺自身が身を引き裂かれているかと思った」

 押し殺した声がゆれる。

「女を抱えて墜落してゆくのを見たときは……だんだんと灰になり、崩れてゆくあんたを抱えて飛んだ時は、俺の心も壊れて崩れるかと思った……!」

 声が、ゆれる。

「牙王との……あの赤い髪をした吸血鬼との対決は、そして、土から出てきた化け物との戦いは、本当は、俺のものだったんだ。
 あんたが受けた傷も、痛みも、屈辱も……本来なら、俺が全て、受けるべきものだった……!」
 
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