Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 さんさんと降り注ぐ月光は、まさに「癒し」だった。

 赤髪の男……牙王に裂かれた傷を治した。

 そして、銃弾を受け、灰になりかけた僕の身体のダメージを軽減し、確実に快方に向かわせた。

 しかし。

 支払わばなら無い、代償も要求した。

 今まで限りなく「死」に近く、何も求めてこなかった身体が「生きる」ためにその糧を欲しがったのだ。

 ………!

 僕の身体を駆けめぐる全身の血が。

 さぁっと、音を立てて引いていった。

 凄まじい咽の渇きは痛いほどで、獲物を捕まえ引き裂く爪が、さらに長く鋭くなる。

 ……!!

 ゆっくり寝てなどいられなかった。

 身の置き所なく悶える身体が、ふらふらと起き上がる。

 本能のままに獲物を捜し……求めるものは、すぐ近くにあった。
 
 



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