Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 ……り…ん……か……

 い…や……だ。

 それ……だけ…は……



「……ま…て……」

 そっと一礼し、気を利かせて出て行こうとする残月を、僕は必死に呼び止めた。

「凛……花……も……連れて……いけ」

「駄目だ。それは、あなたが生きるために必要な獲物だ」

「凛花……を……傷つけ……たく……ない……」

「駄目です。人は……人間は所詮、吸血鬼の糧でしかない。
 その女の血をすすり、あなたが生きてゆかなくては!」

「いやだ……っ!!」

 僕は、全身全霊をかけて叫んだ。

 凛花を傷つけたくない。

 凛花の事を守りたい。

 ただそれだけのこと。

 僕のささやかな望みなのに。

 それは、吸血鬼にとってこんなにも過酷な願いなのか。
 
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