Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「僕が……お前の……主と……やらなら……言うことを聞け!!!! 」

 自分でも、魂消えるほどの声が出た。

「凛花連れて、今すぐ出ていけ!!!!!!」




 ………!



 吼える声が残月を打つ。

 奴は凛花を抱きかかえて、部屋を出ると、静かに扉をしめた。

 そう。それでいい。

 早く、出て行け。

 咽が乾いて獲物が出て行く匂いに、つられそうだった。

 後を追っていきたくなるのを必死にこらえて、僕は膝を抱えて床に座り込む……が。

 すぐに、香ってきた甘い血液の香りに、はっ、と頭を上げた。

 莫迦な……!

 残月が、隣の部屋で凛花を傷つけたのか!?

 人間の血液は、そのままでは飲めない。

 抱いてやらねば、全部吐きだしてしまうのに!

 いくら、僕が凛花に直接口をつけないからと言っても、そのままの血液を飲めるわけがない。

 そのことは、同じ吸血鬼ならば、百も承知はずなのに!
 
< 181 / 298 >

この作品をシェア

pagetop