Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「しかし、時間が、彼らを変えた。
 先代のリーダーが老齢のために代替わりした途端に、私の情報の一部が外に流出したんだ。
 私の血液や体組織は、不老の元として、万能薬として、闇から闇に広がった」

「……似たような事は、昔から無かったか?」

 人間は。

 僕が長く生きる事を知ると、僕の血を、破片を求めて様々な事を試みた。

 僕自身だって、昔は一人で生きる寂しさに、仲間を作る努力をした。

 しかし、どれをとっても成功した試しなんか、無かったんだ。

「現代の人間は、血をそのまま飲んだり、肉を食べたりする以外に、
もっと別な方法で、吸血鬼の組織を身体にとり込むことも、
生まれる前に、細胞をいじることもできるようになったのだ………皇子。
 そうやってできた異形の者達は……私の子供達、と言って過言ではない。
 もちろん、愛の結晶でも、快楽の果てに出来たものでさえないが」

 残月は、深々とため息をついた。

「とは言え、成功率はまだ低い。
 人間が、私の組織片を使って、ほぼ完璧に吸血鬼になった例は、牙王だけだ。
 ……私の知る限りではな。
 後は運が良くて、あの日光に極端に弱い、土に潜って進む化け物で……運の悪い奴については、言いたくもない。
……あまりに、おぞましすぎて」
 
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