Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 純粋な吸血鬼は本当に、あなたと私の二人きりしか居ないのだから、と残月は寂しげに微笑んだ。

「人間は、嫌いだ。
 生きるために、人間の中に住み「教師」の仮面を被って暮らしはしたが。
 吸血鬼である自分の事を差し置いて言うのもどうかと思うが、人間は相当残虐だし冷酷な生き物だった。
 自分達の利益のためなら、他人がどんなモノに変わろうがお構いなしで、下品で、醜くく……」

「でも、お前は」

 僕は、ベッドから半身を起こしてささやいた。

 残月の目を見るために。

「そんな人間達を、助けに行くのだろう?
 これ以上余計な被害が広がらないように。
 本当に嫌いならば、放っておいてもいいんだ。
 人間達が勝手に自分達の始末はするだろうに。
 でも、ほっとけなくて。
 ……お前は、やっぱり人間が好きなんだよ」

「………!」

 残月の赤い瞳は、驚いたように見開かれ……月光を跳ね返して、水に濡れたような何かが、きらり、と光った。

「……皇子。
 あなたも、嫌いだ」

 残月は、微笑んだ。

 今まで見たことの無いほど優しげな、でも、決意を込めた、いい顔で。

 彼は、そのまま長い髪をなびかせて、部屋を出て行く。

 人間を、救いに。
 


 
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