Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 残月が出て行って、間もなく。

 かすかな喘ぎに振り返れば、隣の部屋で、凛花が目覚めるところだった。

 僕は、反射的に人になる事を願い……髪と爪が滑らかに戻る事にほっとする。

 僕が完全に人に戻った頃。

 凛花の意識も回復したようだ。

 僕の姿を見つけて、鈴木先生……?
 と首を傾げ……。

 次の瞬間。

 小さな悲鳴をあげた。

「凛花、どうし……!」

「いや! 来ないで!」

 ………!

 飛んで来たクッションが、僕の顔に当たって、思わずのけぞった。

 悲鳴に驚いて、ベッドから飛び降り、凛花の元へ駆けて行こうとする僕に、彼女が投げた奴が命中したのだ。

「見ないで!
 来ないで!
 服が破れて……!
 なんで、私、裸……!」

「そ、そうか」

 凛花の悲鳴の原因が、そこにあった事が判って力が抜けた。
 
< 191 / 298 >

この作品をシェア

pagetop