Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
  僕は……なんて事を……

 これでは、凛花を無残に抱いた、誰かと変わらないじゃないか。

 セックスで魅了しても、僕は、残月の代わりでしかならないじゃないか。

 ……僕は、凛花の人形のように意思をなくした姿を、見たかったわけじゃない。

 ただ、大事に。

 大事に愛したかっただけなのに……

 悔しかった。

 悲しかった。

 それでも………

 こんな凛花は、見たくなかった。

 僕は、そっと凛花の目蓋に口付けして、呪縛をといた。

 とたん。

 凛花の目から大粒の涙が後から後から、溢れ出す。

「も……や……だ……
 本当に……残月だったら良かったのに……」

 凛花は、泣いていた。

 決して手に入れられない者への「愛」を惜しんで。

 ただ、泣いていた。

 
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