Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「僕が、下ろしてあげる……残月の所まで連れて行く約束だったろう?」

「本当!?
どうやって!」

「……こうやって」

「……!」

 僕が凛花に近づくと、彼女はビクッと身を縮めた。


 僕に触られるのを怖がっている……?

 僕は、軽く頭を振ると、思いきって凛花を抱きしめた。

 そしてそのまま、看板の上から飛び降りる。

 僕への恐怖を落下への恐怖にすりかえるように。

「っきゃゃゃゃやあ!
 落ちる!」

「大丈夫!」

 風がすごい勢いで吹きつける。

 デパートの周囲の植え込みがみるみる迫って来る。

「………!」

 凛花は、既に、声一つ上げられず、目を瞑った。

 地面に激突する寸前。

 僕は、出し抜けに翼を出した。

 広げた。





 ガッ!




 翼は、吹きつける風をはらみ、僕達二人、ふわりと空に浮く。
 
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