Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「鈴木……先生……!」

 吹きつける風の強さと方向が変わった。

 いつまでも起きない地面への衝撃に、片目を明けた凛花がそのまま、目を見開いた。

「先生も、残月と同じ……!?」

「………そうだよ。
 怖い?」

「怖いわよ!
でも、本当は誰なのかわかっていれば怖くなんか、ないわ!」

 姿は変わっていても、鈴木先生なんたから!

 そう、勇ましく即答する身体が震えている。

 無理も無い。

 残月ではなく、人でさえも無いものが、ついさっきまで自分の身体を好きにしていたのだ。

 僕は、凛花の震えに気がつかないふりして聞いた。

「このまま飛んで行く?
 それとも、地上に下ろしてあげようか?」

「どっちが速いの!?」

「飛んで行くほう」

「じゃあ、飛んで!」

「わかった」

 僕は、翼に風をはらみ、高度をあげた。

 足元には、安らかな眠りを阻まれた人々のつける家の灯りが点在している。

 寒いのか。

 怖いのか。

 震えてやまない凛花が、僕の腕の中で、そっと聞いた。

「先生達って……本当は『何』なの?」

「僕は……僕達は」
 
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