Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 考えてみれば、当然の話だった。

 こんな大きな話なのに、一番上の人間が全く関与していない、という方が変だ。

 僕は、一直線に花壇に下りようとして、残月に止められた。

「……凛花と、皇子はここに残ってください」

「凛花を置いていくのは賛成だけど、僕も行く。
 乗りかかった船だ」

「しかし」

 自分で何もかも解決しようとするのは、吸血鬼の悪い癖だ。

 今まで頼れるものは、自分自身だけだったのだから。

 他に何も無かったのだから、仕方ないけれど。

 それに。

 残月の顔色が良くない事に気がついてしまったから。

 僕が、奴の血をだいぶ吸ってしまったせいだ。

 残月が、僕の事を心配するように、僕だって心配だった。

 せっかく出合った唯一の仲間を、みすみす失うわけにはいかなかった。

 残月ばかりではない。

 長い時をたった一人で生きる重荷に耐えかねていたのは。

 ……僕だってそうなんだ。
 
< 228 / 298 >

この作品をシェア

pagetop