Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 土山の化け物と人間が、争っているその真っ只中に、僕達は、飛び降りた。

 校舎の五階から。

 僕と残月は不可視をまとい、音も無く降りる。

 だから、人にも化け物にも気づかれず『輪』に向かうことが出来ると思っていた。

 が。

 しかし。

 地上に着地したとたん、怒鳴り声が僕達の行く手を遮った。



「化け物共!
 凛花を離せ!!」



 一晩中、散々大声を張り上げて走り回っていたらしい。

 血と泥で汚れたスーツを着て、かすれた声をあげたのは、大槻 穣。

 凛花の兄だ。

 彼は、警察から支給されたらしい拳銃を、横向きに構える。

 その狙っている先は、僕だとわかって、凛花を下ろした残月が、庇うように前に出た。
 
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