Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「あんたは、俺達が見えるのか?」

 不可視をまとって人には、見えないはずの自分達が。

 残月の問いに、穣は、驚いた顔をした。

「……!
 化け物が、しゃべった!」

 化け物か。

 翼を出し、ほとんど本性に近い僕達は、どう見ても人間には見えないだろう。

 化け物と言われて否定はできない。

 しかし、それが見える、と言う事は。

 穣に、不可視が効かない、と言う事だった。

 凛花には、魅了が効かなかった。

 この兄妹の体質なのだろうか?

 二人は、明らかに人間なのに。

「凛花!
 さあ、早くこちらにおいで!
 化け物共!
 大事な妹に、何かしたら、殺してやるから!」

「……大事な、妹だと!?」

 穣の言葉に僕の感情が、ざわり、と逆立った。

 凛花の身体の酷い、傷。

 新しいキスマークも、古いナイフの切り口も。

 あれだけ様々な種類の、つけられた時間に幅のある傷は、凛花にごく近い者にしかできるはずもなく。

「……お前が、凛花を弄んでいるのか!?」

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