Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「……義父が……」

 地面に手をつく穣に駆け寄って、凛花は、ぽつり、と言った。

「……義父?」

 そういえば、凛花は、両親が死んだ、と言っていた。

「両親は……おれ達が……幼い頃に殺されたんだ!
 おまえ達みたいな、醜い化け物に!」

 穣は、そう叫んで、僕達を睨みつけた。

「……なんだって?」

「牙王です。 皇子」

 面食らっている僕に、残月が囁いた。

 まるで、仮面のように、表情を消した まま。

「大槻の両親は、私が関わった機関で……牙王の生まれた場所で、研究者をしていました。
 しかし。
 研究に深く関わったにもかかわらず、組織を辞めると言い出して……牙王の最初の餌食になりました」

 そして、孤児になった兄妹は、それぞればらばらに引き取られ……凛花は。

……凛花の引き取られた先が、外道だったのだ。

「お前は、刑事だろうが!
 そういう輩を、さっさと、取り締まれ!」

「化け物に言われるまでもない!
 ……しかし」

 穣の歯切れが急に悪くなった。
 
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