Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
造られた異形
「……こんな所が、学校の地下にあったなんて……」
穣が、驚いてつぶやいた。
裏庭の花壇にあった吸血鬼の輪をくぐると、そこは。
地下広場にでたのだ。
一面、大理石を模した、灰色のリノリウムの床が続く。
広場をギリシアの遺跡のような、真ん中が膨らんだ柱が乱立し、何やら凝った彫刻のある天井を支えていた。
柱の先についている、明かりに浮かび上がったその姿は。
吸血鬼を造る工場、というより、テーマパークにある安っぽい宮殿のように見えた。
しかも、造りかけのテーマパークだ。
所々で広場の天井が崩れているのが見える。
床には、天井から落ちたらしい新しい土が小山になっていた。
ここから、土山の化け物は、柱を伝って外にでたのか。
あまりに多くがいっぺんに出て行ったので『輪』だけでは出入り口が足りなかったのかもしれなかった。
今、この場所に人の気配は、無い。
僕達は、来賓用と思われる、赤い絨毯の上を慎重に進んで行った。