Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
グァァァァァァ二ィィィィィン!
自分の行く手に、明かりのあるのがよほど嫌なのか。
暗闇に居るそいつは、不満そうに一声叫ぶと、わずかに開いた扉に手をかけてきた。
デカい!
扉から出てきた緑色の手は、指の長さだけでも、五十センチ以上はありそうだ。
そのどろどろの粘液混じりの手にぐい、と力がこもったかと思うと。
大きな手に見合うだけの巨大な頭が、ぬっと出て来た。
扉の半分くらいが頭だけで、埋まる。
…………!
僕だけではない。
その光景に、皆が息を呑んだ。
あるいは、息を殺して、悲鳴を飲み込んだ。
……人は。
一体「何」を造った、と言うのか。
これが、残月の言った、土山の化け物よりも酷い……もの。
額の出た、奇怪な人間の赤ん坊のような顔だった。
緑色の粘液を被った頭に髪は一本も生えてない。
猫のように縦に瞳が裂ける金色の目にはまぶたがなく。
永久に見開いたままの目は、何かを探しているようにきょろきょろと動いた。
そして、その目が。
僕と人間たちを捉えて、更に大きく見開かれた。