Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 老人は、僕を成人になるまで見守り、数百年前に、砂のように他界した『爺』。

 僕自身以外で唯一知っている吸血鬼だ。

 そして、一人の子供は黒髪の少年で、僕だとすると、もう一人の少女が謎だった。

 人間の子供かも知れなかった。

 でも、僕は。

 絵の少女が吸血鬼だと、信じたかった。

 ……僕以外に、仲間がいると信じたかったのだ。

 少女の長い銀髪は、吸血鬼に変化した時のものではないか、とか。

 頬は、人間にしては青白すぎやしないか、とか。

 僕は、絵を自分の都合のいいように解釈して……そして、絵の中の少女に恋焦がれていた。

 そう、これは、僕の「恋」だったんだ。
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