Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 



 ゥアアアデェェェェェ二ィィィィン!



 それ、は。

 歓喜の雄叫びを上げているようだった。

 扉から、ずるずると引き出された身体に足はなく、かわりにナメクジのような尻尾がある。

 その巨大な身体をねとねとの腕でいざりながら、僕達に向かってやって来た。

 残月には、目もくれず、まるで、鉄が磁石に引き寄せられるように。

 その神経を逆なでするような、醜い姿に悪寒がはしる。

 僕は爪を長く伸ばし、襲撃に備えて、構える事は、構えたけれど、なるべくならその肌に触れたくはなかった。

 しかし。

 そいつは、背に隠している人間に、ではなく、僕自身に用があるらしい。

 僕の瞳を覗きこむように見ると、耳まで裂けた口を、開いた。

 ……微笑んでいるのか?

『シト……シン……?』

 僕の間合いから、少し、離れた所で、そいつは、囁いた。

「え?」

『シトシン……シトシン……アデニン……グアニン…チミン?』

 言っている事が、わからない。

 しかし。

 そいつは、僕に、敵意が無い事を示すかのように、囁く。
 
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