Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
『シトシン、シトシン、シトシン』

「待って!」

 爪を長く伸ばし、攻撃を始めようとした残月を、凛花が止めた。

「……なにか、戦う気がないような気がするの」

 確かに。

 僕を庇おうとした残月も、困ったように、首を傾げた。

「塩基配列ですか……DNAの」

「多分」

 それ、は。

 たった四つの言葉だけしか知らず。

 その四つの言葉だけで敵意が無い事を言い表そうと。

 そして、何かを僕に伝えようと、必死のようだった。

『アデニン、グアニン、シトシン、チミン』

 全ての生物は、その四つの『塩基』から出来た『DNA』のプログラムできてはいるけれど。

 当然、それ、は、会話を構成するには程遠く。

 僕は、首を振ると、緑色の怪物に、一歩近づいた。

「……お前は、一体、何を……?」

 言いたいんだ?

 と言う言葉は、次にやって来た騒音に、かき消されてしまった。
 
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