Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 



「ダレだ! 来客用のゲートを開いた莫迦は!
 エンキまで、外に出やがったら、ダレが連れ戻すんだよ!
 オレは、イヤだからな!
 気持ちわりぃ!」

 派手な悪態をつきながら『エンキ』と言うらしい、緑色の怪物の粘液を踏みつけ、扉から出てきた者がいた。

 扉から、出てきたヤツは、ひどく危険な雰囲気をはらんでいる男だった。

 緑色の怪物より一回り小さいけれど、それでも『人間の基準』からすれば、十分デカい。

 血液が固まったような、赤い髪の色を持った男。






 牙王だ。





 月光にかざしても、傷が治らないのか。

 それとも、ゆっくり月光浴をする余裕がなかったのか。

 僕に貫かれた目は未だに癒えず、顔の右側を汚い布で、覆っている。




 そして。

 ヤツは、エンキと僕達を見つけるなり、げらげらと笑い出した。
 
< 242 / 298 >

この作品をシェア

pagetop