Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「ダレだ! 来客用のゲートを開いた莫迦は!
エンキまで、外に出やがったら、ダレが連れ戻すんだよ!
オレは、イヤだからな!
気持ちわりぃ!」
派手な悪態をつきながら『エンキ』と言うらしい、緑色の怪物の粘液を踏みつけ、扉から出てきた者がいた。
扉から、出てきたヤツは、ひどく危険な雰囲気をはらんでいる男だった。
緑色の怪物より一回り小さいけれど、それでも『人間の基準』からすれば、十分デカい。
血液が固まったような、赤い髪の色を持った男。
牙王だ。
月光にかざしても、傷が治らないのか。
それとも、ゆっくり月光浴をする余裕がなかったのか。
僕に貫かれた目は未だに癒えず、顔の右側を汚い布で、覆っている。
そして。
ヤツは、エンキと僕達を見つけるなり、げらげらと笑い出した。