Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 残月は、近くに落ちて来て、僕に触れようとした土山の化け物を無言で切って捨てた。

 落ちて来た中の一匹は、エンキの上に落ち、つるつる滑ってもがく。



 グァニィィィン!



 その、不運なヤツは、不機嫌に叫んだエンキに、見事に踏みつぶされた。

「出来損ない共が、帰って来たな。
……全く、どうやって皇子の気配を嗅ぎつけるんだか」

 牙王は、けっ、と唾を吐いた。

「何だって?」

 言葉に、思わず聞き返した僕に、牙王がぎらり、と笑う。

「まだ判らないのか?
 コイツら全部。
 出来損ない共も、エンキも……クソ忌々しい事に、このオレ様も含めて……
 全部が、お前に惹かれて、やって来たんだよ!」

 なん……だって!?

「それは、どういうことだ!?」

「……『皇家の者を護れ』これは私の血が。
 細胞がDNAレベルまでにも記憶した命令だからです。
 ……皇子。
 だから、私の細胞を使い、吸血鬼になったモノ達は、全て、あなたに惹かれて『護ろう』とする」

 残月に、表情は、ない。
 
< 244 / 298 >

この作品をシェア

pagetop