Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「もっとも、人間の造ったモノ達たちは不完全です。
 遺伝子レベルの『護れ』を曲解して取るモノも出たのでしょう。
 この牙王や土の化け物のように、皇子を傷つける輩も生まれた所を見ると」

 残月に、表情は、ない。

「遺伝子レベルまで、命令って……それは……!」

「そうです。
 厳密に言うと、私も………吸血鬼では、ありません」

 残月の表情は、もはや、人形のように虚ろに見えた。

「……私もまた、吸血鬼に造られた、吸血鬼に過ぎません。
 ……千年前に造られた、吸血鬼なのです」

「……何……!?」

 残月の告白に、僕は耳を疑った。

 残月の手は、暖かかった。

 その血は、甘く、飢えた僕の喉を潤した。

 ………しかし。

 確かに。

 その瞳の光は。

 僕の『魅了』に浸食されてはいなかったか?



 ……吸血鬼同士なら、決して侵される事のないはずの『魅了』にもっとも近い光を僕は見た。

 あの月光の射す、残月の家で。
 
 
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