Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「私は、ただの人形でしかない……!
 あなたを護る、という意思も、私の底に眠る感情も、全て、造られた物。
 偽の心でしか……ありません」

 残月は、自分の分身を無表情で、駆逐してゆく。

 顔に感情は無くても、残月の背中が泣いていた。

 千年間、たった一人で自分と対峙した結果、出した答えがこれでは……自分の存在全てが『偽』だとしたら。

 それは、あまりにも悲しすぎて。

 黙っているわけには、いかなかった。

「……そんな事は、ない」

「……皇子」

「お前が、どうやって生まれたかではない。
 これから、何をしたいのか。
 何をするのか、だと思う。
 お前は、人間が好きで、人間のためにここを破壊しに来たのだろう?
 それは、血とも、お前を縛るその他のものとは関係ない、おまえ自身の意思のはずだ。
 ここは、僕に任せて、お前は、奥に行け。
 行って、自分の意志で、ここの全てを灰埃と化せ」

「しかし、皇子!」
 
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