Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
死闘
ゥアァデ二ィィィィィン!
エンキの雄叫びが。
期せずして、闘いの合図になった。
土山の化け物に包囲され、しかし、闘う気、満々のエンキの叫び声だった。
きぃん!
こん かっ!
僕と牙王の触れ合う爪の音は、金属音に近い。
高く。
低く。
まるで、音楽のように、不可思議な音程を生み出す。
その一撃一撃が。
必殺の。
あるいは、相手により多くの血を流させる為の手段だった。
かきぃん!
びゅっ!
牙王の鋭い爪が、僕を掠めて、空をなぎはらう。
片目をなくしたばかりだというのに、牙王の距離感は正確だった。
完全な牙王のフェイントを、僕は『速さ』で強引に避ける。
それでも、僕の髪が数本。
はらはらと落ちて牙王が、笑う。
闘いの最中に。
「なかなかどうして!
ヤルじゃないか、皇子サマ!!
キサマが人間だったら、今の一撃で、勝負がついたのに!」
「……人間だったらな」
微笑む余裕は、僕にもある。