Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「なぁ、皇子サマ。
 何でオレ達は闘っているんだ?
 良く考えてみたら、オレとキサマが闘う理由は………
…………無い」

 牙王は、にたり、と笑った。

「オレだって、人間よりは永く生きるぞ?
 キサマが、一人で寂しいというなら、何かしらつきあってやってもいい。
 昼間は退屈だろうが、夜になったら色々遊ぼうぜ?

 あの、残月とかいうデクノボーは、ここが気に食わないようだが、オレにとっちゃぁ、ここは『家』だ。
 無傷で残すように命令してくれれば、オレ達はちったぁ、仲良くできるんじゃないか?」

 どうだ?

 と、牙王は首を傾げる。

 字面だけでは、それなりに悪くない交渉だった。

 相手にも、立場と生き様と言うものがある。

 それを考えれば。

 しかし。

 僕は、牙王のその表情が気にくわなかった。

 下品で、ずるそうな……何か、企んででいるような、表情が。

 油断無く、爪を構えたまま、僕は訊く。
 
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