Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
『魅了』を解いた以上、過去にも女を愛した残月が、男である僕をそんな風にみる事は、有り得ない。

 しかし。

 牙王はげらげらと笑って、言葉を繋げた。

「この世には、キサマを貪り喰おうとするモノしか、残っていないさ!
 オレも、出来損ないも。
 エンキや残月さえ。
 どうする?
 皇子サマ!
 こうなったら、自分の細胞で、自分を増殖させて、それを相棒にするか?
 究極のナルシストになれるぞ。
 ぎゃはは……!」

「黙れ!」

 く……そ。

 何だってこいつは。

 こいつは、こんなにも人の神経を逆撫でする……!

 これは、挑発だ。

 僕のペースを乱す為の挑発だ。

 それは判っていても、自分の感情と折り合いがつけるか、と言うのは、別の話だ。

 牙王の野卑めいた表情を見るにつけ。

 下品な笑い声を聞くにつけ。

 怒りが。

 白く輝く鮮烈な怒りが、ふつふつと湧いて出て来る。

 僕は、これ以上モノも言わずに、爪を構えた。

 本気で。
 
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