Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 笑い続ける牙王の口をふさぐべく。

「おっ、ようやくヤル気が出てきたようだな。
 勝負っていうのは、本気じゃないと、つまらねぇ!」

 牙王は、いち早く、僕の気配を読んで、舌なめずりをした。

「でも、なぁ。
 本気でヤってもキサマの爪で、オレの皮膚が裂けるのか?
 お嬢サマの華奢な爪は、マニキュアでも塗って仕舞っとけ!」

 ………!

 怒りで。

 闘いの駆け引きが飛んだ。

 感情のままに、軌道を描いた僕の爪は、鋭く、でも、一直線に牙王の元に滑り込む。

 が。

 牙王の心臓に突き刺さるはずの爪は、それた。

 僕の右爪は、牙王の左脇に、手首ごと、抑えつけられた。


 ……しまっ……!



 牙王は、力で僕を上回る。

 捕まってしまえば、簡単には、抜け出せない。

 焦って繰り出した、左爪も、牙王の爪に弾かれて軌道を変え、やはり、左手首を牙王に掴まれた。
 
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