Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 すっかり、服を調えた頃。

 ベッドのブックホルダーに置きっ放しになっていた、携帯が鳴った。

 誰もが一度は聞いたことはあるような、クラッシック音楽を聞きながら、僕は息を整えた。

 不用意に喋ると、機械は、僕の声を受け取ってくれないのだ。

 僕のことを好いてくれているらしい、魔鏡でさえ、僕の姿を写すのを拒むように。

「……はい。鈴木真也です」

 人間の声音で、嘘の名前をつく。

 相手は、今夜初めて会う予定の女からだった。

 待ち合わせの場所に、もうついたらしい。

 僕は必要な事を幾つか話すと、最後に携帯をしまった。

「お出かけですか?」

「ああ」

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