Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「駄目です、皇子!」

 牙王の元に駆け寄ろうとした僕を、止める者がいた。

 残月だ。

 校長の後から続いて、入ってきたらしい。

 残月は、僕を羽交い絞めに抱きとめると、そのままずるずると後ろに下がった。

「何をする! 放せ!」

「もう、牙王は助かりません!
 それよりも早く逃げないと!
 校長が私達よりも早く、仕掛けた爆発物のスイッチを入れました!
 ここは、もうすぐ火の海に……!」

「うるさい!」

 僕は、残月の腕をすり抜けると、彼を突き飛ばして牙王と校長に近づこうとした。

 火の海?

 だったら、なおさら。

 このまま放っておくわけには行かないじゃないか!

 しかし。

 またしても、僕の行く手を遮る者がいた。






 アデニィィィィィィン!




 エンキだ。

 エンキが、両腕を広げて、行く手を邪魔したのだ。
 
< 265 / 298 >

この作品をシェア

pagetop