Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「何をしている! 早く来い!」







 シィトォシィィィィィン!!!






 エンキは、もう一度嬉しそうに吼えると、巨体を返して、更に遠のいてゆく。

「エンキ!」

「駄目です!
 エンキは……
 奴は、自分が『ナニ』か心得ています。
 ここを離れては、生きていけないことを!
 地上で、身体は生き延びる事ができたとしても、人間は、エンキを決して受け入れない!」

「人間は受け入れなくても、僕が受け入れてやる!」

「エンキの粘液は、吸血鬼にとって毒です!
 強くはありませんが、長く一緒に暮らせば、あなたの身体を破壊するでしょう。
 ここでエンキは、ガラスケースの檻にいました。
 あなたも、そうやって、エンキを『飼う』おつもりですか!?」

「……!」

 それでも。

 それでも!

 牙王も、エンキも。

 あるいは、土山の化け物だって生きる権利は、あるはずで!





 僕は、頭を一つ振ると、覚悟を決めた。
 





  
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