Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
『ヴ………っ!
 ………く……う………」

 しかし。

 文字通り、僕の生涯最後の言葉になるはずだった言葉は、残月に塞がれた。




 ……残月のその口で。

 残月は、折れそうなほど強く抱きしめると僕の唇にくちづけたのだ。




「な……!」

 何をする!

 吸血鬼の輪を形成する言葉も。

 驚き、戸惑い、混乱した僕の抗議の声さえも。

 どんなにもがいても、びくともしない抱擁と。

 残月の長いくちづけの前に消えた。


「…………死んでは、いけません。
 あなたは、ここで死んではいけません………!」

 残月は僕をかき抱く腕の力を更に込めた。

「あなたは、より多くの命を救おうと、その身を犠牲にしようとする……
 しかし、私は。
 私自身を含めた全ての命を捨てでも、あなたには、生きていてほしい……!」

「一つの……命の重さは……変わらない……!
 僕に……そんな……価値は……ない……」

「いいえ。
 いいえ!
 いいえ!!」

 残月は、まるで、泣いているかのように叫んだ。
 
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