Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「身体に組み込まれた血の契約と、魅了と、そのほか私を縛る全てのものを越えて私は!
 私は、全身全霊をかけて、あなたを、あ……い……っく!」

 残月は、言いかけた言葉を呑みこんで言い直した。

「……護りたい。
 そう、護りたいのです!
 全てを捨てて、死んで行くのは簡単です!
 しかし、あなたは!
 あなたこそ、残された者が、どんな思いでこれから先を生きていかねばならぬのか、知っているはずだ!!!」

「だけど、僕は……!」

「……凛花は、泣きます。
 あなたが死ねば。
 それに、あなたに関った全てのものが……!
 あなたは、もう彼女を泣かさないと誓ったのでしょう!?」

 残月は、すうっと目を細めると、いきなり、僕のみぞおちを掌打した。

「……ぐ……く……!」

 疲れきった身体に、思いも寄らない攻撃を受けて、僕はへたへたと座り込む。

 動けなくなった僕の身体を、軽々と抱えながら、残月は、囁いた。

「すみません、皇子。
 エンキや牙王でさえ、あなたがそうやって死んで行くのを望まないでしょう。
 そして、私はどうしても……
 どうしても、あなたには生きて……笑っていて欲しいのです………」










 
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