Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
Ⅹ章
夜の終りに
造られた吸血鬼達の住処が、どれくらい地下深くにあるのか、判らない。
……全てが終わる音はごく微かに、大地を響かせた。
残月は、大槻兄妹と、地下にいた何人かの人間を地上に導くとすぐ。
抱えていた僕をここに下ろして、どこかへ消え。
そして、僕は。
吸血鬼の輪だった花壇近くの木に、もたれかかるように座って聞いていた。
人間の耳には聞こえないかも知れない、その密やかな音を。
たった一人で。
……僕は、何もできなかった。
誰も救う事ができなかった。
造られた異形たちは、今。
何処とも知れない地下深くで、燃えている。
「ち……く……しょ……!」
僕は、自らの体重を預けている、木の幹を叩いて、毒づく事ぐらいしか、できない。
人間より永く生きても。
重いモノを持ち上げ、素早く動く事が出来ても。
空を飛べても。
そして『輪』を作る……二つの空間を一つに繋ぐ………ことが出来ても。
僕は。
ひどく、無力な存在でしかなかった。