Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 判っていた。

 そして、判っている。

 人間は、正も邪も併せ持つ混沌とした生き物だと言う事を。

 不完全ではあるものの、次代に命を伝えながら、より高みを目指す、強く、儚い……

 ……愛しい生き物だと言う事を。




「こ……の……!」

 穣は、怒りに青ざめた顔で、震えていた。

 自分が蔑んだ化け物に何も言い返せず、拳を白くなるまで、握り締めていた。

 僕は、そっと凛花から離れると、ゆっくりと立ち上がった。

 そして、吸血鬼から、人間の姿に姿を変える。

 傍らの木で、ふらつく身体を支え、それでも、しっかりと穣の目を見ながら。

「僕は、まだ『鈴木 真也』でいられるうちに……
 ……人権擁護を訴えるNPO団体に所属した『臨床心理学士』でいるうちに、お前達の義父を凛花の事で告発する」

「お前が、人間に代わって正義を振りかざす、というのか?」

「違う」

 しがらみのために、穣ができないのなら、僕が代わってやってやる。

 あと一歩で、何かが変われるはずの、お前達の後押しをしてやるだけだ。

「しかし、裁判になったら、お前は自分の所属する警察の方に……義父にはつかずに、凛花の味方をするのだろう?」

「それはもちろん……!」

 言い放って、口を押さえる譲に僕は、静かに微笑んだ。
 

 
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