Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 そう。

 僕にはやりたい事があったんだ。

 そして。

 まだ、やれる事もある事にも気がついた。

 爪も翼も無い人間の姿で。

 悲しみが繰返されないように。

 凛花が、少しでも笑っていられるように……

 吸血鬼も人も同じはずだった。

 目標があるから、前に進んで行けるのは。



 一段と暗さの増した空の東の端が、薄く白み始めた。

 夜明けが近い。

 僕は、この長かった夜に別れを告げようと、歩き始めた。

「……残月を待たないの?」

 凛花の声に、僕は振り返った。

 そういえば。

 残月は未だ、ここには戻って来ない。

 地上に出てすぐ消えてから、だいぶ経ったような気がするのに。

 一体、何をしているんだか。

 僕は、そっとため息をついた。
 
 
 
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