Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「いいんだ。
 残月の住処は判っている。
 用が出来たら改めて、出向いてゆくさ。
 ……それに……」

 あと一言で輪が完成する寸前のこと……

 残月の血を吐くような思いは、僕にも伝わった。

 だから、地上に無理やりつれてこられた事は……残月のために、異形たちを助けられなかった事は。

 納得はしていないが、残月を恨んでもいない。

 ただ。 

 互いに必死だったから、その時は何も感じなかったが……

 ……残月に口づけられた事を思い出して、ぞっとする。

 男にキスをされるなんて、金輪際、二度とごめんだ。

「……できる事なら、最低二、三十年ほど残月には会いたくない。
 どうせ吸血鬼に出会えるのなら。
 それが残月ではなく、僕がずっと探していた絵の少女だったら良かったのに……!」

「私ではなく……どの吸血鬼に、お会いしたかったんですか?」

「う……あ……ざ、残月!」

 半分口の中で言った、心の叫びを。

 僕の背後から、いきなり現れた当の本人に聞かれて、うろたえた。

 残月は、特に気配を消しているわけではなかったのに、僕が気がつかなかったのだ。

「……千年も待ったのに……」

 地面に座り込み、のの字を書きかねないほど寂しそうな残月の声に、僕は更にうろたえる。
 
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