Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「に、日本のどこかに、吸血鬼が居るはずなんだ」

 少なくともあと一人。

 名前さえ知らない……銀色の髪の少女が。

 しかし。

 僕の言葉に、残月は、首を振った。

「日本にかぎらず、世界中を探しても、純粋な吸血鬼はあなただけだ。
 造られた異形なら他にもいますが……」

 自嘲ぎみに笑う残月に、今度は、僕が首を振る。

「……最近、屋敷の蔵を整理したら出てきたんだ。
 文献や……絵が。
 僕は、幼くて覚えてなかったが……千年ほど前。
 僕達吸血鬼が、この日本にやってきたときの記録が……」

 西暦1019年。

 刀伊が、北九州に来寇して来た時に、僕達は戦の船にまぎれてやって来た。

 三人の吸血鬼の記録が。

 そして、故郷を離れる直前に。

 永い旅路の前に、描かれた絵が、三人の吸血鬼が誰だったかを物語る。

 僕と、爺と。






 そして。







 ……銀の髪の少女……







 
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