Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「今から、約千年前。
死に至るはやり病のために、吸血鬼のほとんど全てが滅びてゆきました。
もともと、数の少なかった吸血鬼の中で、完全に感染を免れていると思われていたのは、たったの三名の男だけだったのです。
まだ青年になりきっていなかった私と。
年老いた男と。
彼がつききりで世話をしている幼い少年が一人。
しかし。
やむなく故郷を捨て、この島国にたどり着いた時に……」
「何が、あったんだ」
言いよどんだ残月に、僕は訊いた。
「……男は、自分が保護する少年が、死に至る病の保菌者である事に気がつきました」
「……」
「この時は、まだ少年の身体に病の兆しはありませんでした。
しかし。
男は、少年の病が、私に感染することを恐れて、互いに別れて暮らす事を希望しました」
「お前は造られた吸血鬼のはずだろう?
それでも、病が感染するのか?」
「ええ」
残月は、皮肉をかみ殺すかのように微笑んだ。
「私は、それほどまでに……吸血鬼に似せて造られましたから」
そして。
残月は白々と明け始めた空をまぶしそうに見る。
「男は、たとえまがい物の……造られたものであっても『吸血鬼』の存在を少しでも長くこの世に留めておきたかったのかも知れません。
けれども、私は。
……私は、まるで、置き去りにされるように彼らと別れて……
……それから、千年の孤独が始まりました」
死に至るはやり病のために、吸血鬼のほとんど全てが滅びてゆきました。
もともと、数の少なかった吸血鬼の中で、完全に感染を免れていると思われていたのは、たったの三名の男だけだったのです。
まだ青年になりきっていなかった私と。
年老いた男と。
彼がつききりで世話をしている幼い少年が一人。
しかし。
やむなく故郷を捨て、この島国にたどり着いた時に……」
「何が、あったんだ」
言いよどんだ残月に、僕は訊いた。
「……男は、自分が保護する少年が、死に至る病の保菌者である事に気がつきました」
「……」
「この時は、まだ少年の身体に病の兆しはありませんでした。
しかし。
男は、少年の病が、私に感染することを恐れて、互いに別れて暮らす事を希望しました」
「お前は造られた吸血鬼のはずだろう?
それでも、病が感染するのか?」
「ええ」
残月は、皮肉をかみ殺すかのように微笑んだ。
「私は、それほどまでに……吸血鬼に似せて造られましたから」
そして。
残月は白々と明け始めた空をまぶしそうに見る。
「男は、たとえまがい物の……造られたものであっても『吸血鬼』の存在を少しでも長くこの世に留めておきたかったのかも知れません。
けれども、私は。
……私は、まるで、置き去りにされるように彼らと別れて……
……それから、千年の孤独が始まりました」