Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 残月は、言い終えると、目を伏せた。

「私は、男と、少年の名を知りません。
 しかも、吸血鬼は、成人すると面差しが……身体が別人と見まがうほどに変わります。
 しかし、日本に渡ってきたという記録が……絵に描かれた少女が銀色の髪をしていると言うのなら……
 それは、あなた以外にありえません」

 残月は、僕の短くなってしまった髪にそっと触れた。

「あなたが、本来の姿を見せるときに輝く銀髪は……皇家の者しか生えず、他の吸血鬼が、染める事も許されず……そして何より。
 滅びる直前の故郷には……皇女は居ませんでした」
 
 ……!

 残月の話に僕は、言葉もなかった。

 銀髪の少女は、この世に存在しなかった。

 そして。

 僕には、吸血鬼を死に追いやる病が、眠っている。

 こんなにも長く生きて来たから。

 あるいは。

 牙王やエンキにやる命だったから……いまさら『死』は怖く無かった。

 けれども。
  
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