Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 ……もし、僕に病が無かったら。

 残月は、千年の孤独をあじあわなくてすんだはずだった。

 そして、僕も。

 残月よりは短いとはいえ、爺が死んでから数百年間、一人で居る事は無かったのに。


「……では、僕達はここで、また別々に生きた方がいいのか……?」

 残月に、病をうつさない為に。

 永遠に。

 仲間が居る事を知っていて、なお。

 耐え難い、死ぬまでつづく孤独に僕は、正気をもったまま耐えられるだろうか?

 実際に発病し、症状が出るのはいつになるのか判らない。

 今まで千年。

 知らずに病を身の内に飼っていた。

 あと千年。

 発病する事なく、生きるかもしれないのに。

 しかし。

「……いいえ!
 もう、二度と私を置いて行かないで下さい……」

 そう、言って残月は、寂しそうに微笑んだ。

「私は、あなたに口付けました。
 感染するものなら手遅れです。
 私は、人間の手で、血液を飲まなくても良いほど体質は変わり、『吸血鬼』から更に遠のいた存在になりましたが……
 例え、何に感染しても。
 もう、一人で生きて行くのは嫌です……皇子」
 
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