Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 とはいえ。

 何者にも捕らわれず、本当に書いてみたいモノを書くには………

 ……今までの自分の顔で、書くには、抵抗がありました。

 なにしろ。

 今まで、まともに書いた事の無い『性描写』を含めた、大人のエンターティメントが書いてみたかったのです。

 ですから。

 素顔により近い、今までの小説用のペンネームでは、とても気恥ずかしくて書けず……『祠(ほこら)』という新しい顔を作りました。

 そして。

 この発表の場に選んだ野いちご内だけでなく、書籍を含めた、性描写の含まれる物語を読んでみて判っている事もありました。

『性描写』が物語を『喰って』しまうのです。

 キスやセックスや、その他。

『物語』に『性描写』が混ざると、人に読んでもらえる確率が上がる反面、人の意識がそちらの方ばかり向いてしまう、と言う事です。

 官能小説を目指すならそれでもいいのですが、私の書きたかったものは違います。

 大人向けのエンターティメントを書くために、強いキャラクターと、骨太の設定が必要でした。

 時間をかければ、いくらでも湧いて出てくるのは判っていましたが、私はこの試みを速くやってみたくてしょうがなく……

 今までに、自分の物語には一度も登場せず、しかし背景をしっかりと書き込んであるキャラクターを表に出して実験することにしました。




 それが『吸血鬼』の『夜』でした。




 もともと『夜』は、私が最初にネットサーフィンを始めてから、ずっと使い続けているハンドルネームです。

 リアルにいる友人達や、私の素顔を知っている人々には、内緒の。

 『夜』と言う名前を使い、私は掲示板の書き込みや、チャット……時には、架空の女性を抱く事もある……で、ネット上で多くの人と関っていきました。

 そのうちに『吸血鬼』である設定と、その他細かい背景が出来上がって、現在に至ります。
 
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