Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「だ、大丈夫ですか?」

 見かねて近寄って来たOLらしいのを、丁重に追い払い、僕は、あわてて体制を立て直す。


 ……何も来ない。

 人目が多いからか?

 ………僕があまりに間抜けで、やる気がなくなったか……うう。

 でも、何かが、見ている気配は、変わらない。

 今度は視線があったらしい場所を、きちんと探る。

 と。


 がぁ


 カラスと目が合った。

「……お前か?」

 僕が、呼びかけると、カラスは、呆れたように一声鳴いて飛び立った。

 それと一緒に、危険な視線も消える。

 今日は、本当に……駄目だ。

 早く用を済ませて帰るに限る。

僕は、埃を払うと、足早に、待ち合わせ場所に急いだ。


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