Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 ふぇ……ん

 僕は、幼い子供のように泣き出した篠田の肩を抱いた。

 高等科一年と言ったら、十五、六か。

 人間の基準でいってもまだ子供だ。

 引き裂かれた仲間の遺体は、相当ショックだったに違いない。

 心配そうに見つめる凛花に、僕は言った。

「今日は、僕が家まで送るから……君は、帰れ」

「でも……」

 初対面の男に、友人を預けて一人帰るのは心配なんだろう。

 当然だ。

 魅了の効かない少女に、どれだけ説得力があるのかわからないが、僕は、微笑んでみせた。

「大丈夫。
 ちゃんと話を聞くだけだから」

「……うん」

 凜花は、ようやく頷くと、後ろを振り返りながら店を出ていった。


 そう。大丈夫。


 いくらなんでも、人間名を名刺付きで名乗った相手に無茶はしないさ。





 羽を扱うように、優しく抱くだけだ。


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