Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「……今まで、辛かったな……眠れなかったろう?」

「……うん」

 篠田は疲れたように、頷いた。

「今晩は眠れそう……?」

「今は、大丈夫だけど……鈴木さんと、別れて一人になったら…………わからない……」

 だから、今日だけでいいから一晩泊めて、と言って来た少女に、僕は微笑んだ。

「……それは、ない」

「なんで……!」

「僕とお泊まりなんてしたら、君は食べられてしまうよ……何たって、僕は、吸血鬼だから」

 がぉう、と噛みつくまねをすると、少女は、泣き笑いをした。

 そう。誰も。

 本当に、噛みつかれるその時まで、僕が本当の吸血鬼だとは、信じない。

 今はそういう時代だった。

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