Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
「駄目だ。お前はもう『僕』を受け入れられない」

 僕の言葉に、女は、弱々しく首を振った。

「だ……大丈夫。私に……時間をちょうだい…… 少し休めば、血は戻……あっ!」

 ベッドから身を乗り出した女が、床に落ちる寸前、僕は彼女を受け止めた。

「僕はお前から単に、血液だけを取り上げているわけじゃない。精を、生きる力をも奪っているんだ」

 僕は女をベッドに寝かせて、声をひそめた。

「これ以上、僕につき合っていると、本当に……死ぬよ?」

 女はコクリと唾を飲みこんだ。

「い……いいわ。 もう、来ないと言うなら、いっそ私を殺していって……」

 女の瞳から、涙がぽとりと落ちて、滲んだ。
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